特許申請ノウハウ

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この発明は特許?それとも実用新案?

こんにちは。原田国際特許商標事務所の弁理士 原田です。

相談の中で、特許と実用新案の違いが分からないと、良くご質問をいただきます。
今回は、この特許と実用新案との違いについて、具体的な違いを説明します。

発明内容の違い

簡単に説明しますと、特許の保護の対象は、技術的に高度な発明です。
例えば、ビジネスモデル、ソフトウェア、物質の組成や方法など、目に見えないものも権利の対象になります。
一方、実用新案の対象は、技術的に高度なもの以外の、いわゆる小発明と呼ばれる発明です。
こちらは目に見える構造等のみを保護の対象としていて、例えば、方法、ビジネスモデル、ソフトウェアなどはすべて対象外です。

権利化までに必要な手続きの違い

特許は、
① 特許出願(特許申請)
② 特許庁による出願書類の基本的・形式的な要件のチェック
③ 出願審査請求
④ 特許庁の審査官による特許性審査
という手続きを経て最終的に登録になります。

一方、実用新案は、
① 実用新案登録出願
② 特許庁による出願書類の基本的・形式的な要件のチェック
これだけで登録されます。

大きな違いとしては、特許は、特許庁の審査官によって特許性(従来の技術に対して新しいかなど)が審査されるのに対し、実用新案は無審査で登録されるという点です。
このような違いがあるため、特許と実用新案とでは、出願をしてから権利になるスピードも大きく違います。
具体的には、特許の場合、③出願審査請求をしてから特許になるまでに、半年~1年半もの時間が必要です。
一方で、実用新案の場合には、①実用新案登録出願をしてから4カ月程度で権利を取得できます。

権利化の難しさの違い

権利化のハードルにつきましては、技術分野にも寄りますが、特許は概ね60%しか権利になりません。
つまり、40%は特許庁の審査が不合格になってしまうという実態があります。
一方、実用新案は、出願さえすればすべて権利になります。

権利化までに必要な費用の違い

特許事務所に依頼する場合には、
特許は、出願から権利化までに、60万円~90万円程度必要になります。
実用新案は、25万円~40万円で権利取得が可能です。
※この金額は、特許庁に支払う印紙代と、特許事務所の報酬を合わせた、おおよその相場の金額です。

なぜ、特許と実用新案とで、費用に2倍ほどの差が出るのでしょうか。
それは、特許の場合、出願した後の手続きが複雑だからです。
特許は出願後、審査請求をしないと権利を取得できませんが、この審査請求に、14万円~18万円ほどの審査請求料(特許庁に支払う印紙代)が発生します。
また、その後に特許庁とのやり取りが発生しますので、特許事務所に支払う報酬が、20万円~30万円必要となります。

一方で、実用新案は、出願した後の手続きはありません。
ですから、特許に比べて安いのです。

権利行使の際の違い(留意点)

特許の場合、特許庁の審査官の審査を通っているため、特許になった内容で権利を行使することができます。
一方、実用新案の場合には、「実用新案技術評価書」を提示しなければ、実際に権利を行使することができません。
「実用新案技術評価書」とは、特許庁が発行する、権利の有効性についての見解を示した書類です。
実用新案の場合、出願した時には、特許庁で登録要件が審査されていません。
そのため、権利行使の段階になった、「実用新案技術評価書」を特許庁から受領し、提示することが必要になります。

特許出願と実用新案登録出願のメリット・デメリット

特許と実用新案登録、どちらで出願するべきか悩んだときには、出願する技術の高度性や、製品のライフサイクルなど状況に応じて制度を使い分けることが大切になります。

◆特許出願のメリット

・特許庁の審査を経ているため信頼性の高い権利を得ることができます。
・出願から20年という長い期間、権利を独占できます。
・方法やソフトウェアなど、目に見えない発明を権利化できます。
・実用新案に比べて信頼性が高いので、企業のブランド価値向上につながる可能性があります。

◆特許出願のデメリット

・出願をしてから登録になるまでの時間がかかります。ただし、早期審査請求という制度を活用することで、3カ月~半年程度で権利化することも可能です。
・実用新案登録出願に比べて費用がかかります。
・登録にならない場合があります。

◆実用新案登録出願のメリット

・出願してから4カ月程度で早期に権利化できます。
・特許に比べて費用がかかりません。
・創作性の要件のハードルが特許よりも低いです。

◆実用新案登録出願のデメリット

・権利行使をする際に、実用新案技術評価書が必要になります。
・権利期間が出願から10年と短いです。
・構造についてのみが権利の対象となり、方法などについては、対象外となります。

なお、実用新案として登録された後であっても、一定の条件を満たすことで、特許出願へ変更することも可能です。

最後に

特許と実用新案の違いを大事なポイントに絞ってお伝えしました。
「結局この発明は、どちらで出願すればいいの?」
「特許で出せたら権利を行使するときに楽そうだけど、高度な発明かわからない…」など
どちらで出願するべきか悩んだら、お気軽に専門家にご相談ください。