消せるボールペン「フリクションボールVSユニボールファントム」

1. フリクションボールVSユニボールファントムの特許紛争の概要
(1-1)差止訴訟の提起
まずは、遡ること2010年パイロットコーポレーションは、文字を消せるボールペンの特許を取得します。
2011年の2月、パイロットコーポレーションは、文字を消せるボールペンの特許権侵害を根拠に、三菱鉛筆の製品「ユニボールファントム」の差し止め請求訴訟を提起します。
(1-2)特許の無効の請求
その後、三菱鉛筆は、2014年の7月に、パイロットコーポレーションの特許の無効を特許庁に請求します。
その後、三菱鉛筆の請求は認められます。
(1-3)無効審決の取消の訴訟
パイロットコーポレーションは、特許庁の認定(パイロットコーポレーションの特許を無効にするとの認定)を取り消すための訴訟を知財高裁に起こします。
最終的に知財高裁にて、特許庁の認定は取り消され、パイロットコーポレーンの特許が有効であるとの判決が確定されます。
(1-4)販売停止の仮処分の申し立て
その後、パイロットコーポレーションは、三菱鉛筆の「ユニボールファントム」の販売停止を求める仮処分を申立てました。

2. パイロットコーポレーションの特許の内容
(2-1)権利の内容
パイロットコーポレーションのフリクションボールの特許の権利範囲ですが、ざっくりと説明させて頂きますと、以下の①の要素と、②の要素とを備えた筆記具について権利化がされています。
① 摩擦体による摩擦熱によって、第1の状態(有色)から第2の状態(無色)へと変化する特性を備えたインキが充填され、
② キャップの頂部に摩擦体に装着されている筆記具。

3. 三菱鉛筆株式会社のユニボールファントムの内容
次に、三菱鉛筆株式会社が販売している製品「ユニボールファントム」ですが、キャップの頂部に摩擦体が装着されており、摩擦体でインキを消せるようになっています。

ここで、今回の製品、無色へと変化するインキが充填されたボールペンだけでは、インキを消すことができません。
つまり、今回の製品は、インキを消すための摩擦体とセットになって、初めて意味があるものです。

消しゴムのように、単独の製品で摩擦体を販売することも考えられます。しかし、インキを消すためだけに使用する摩擦体を別途、購入し持ち運ぶのは、紛失のリスクがあったりします。そのため、キャップの頂部に摩擦体が装着されていることによるユーザメリットがあると言えます。
ユーザメリットがある内容(ベストモード)にて、権利を取れたという観点からすると製品の優位性を出すために有効な権利といえます。
仮に、三菱鉛筆がキャップの頂部に摩擦体を装着しない鉛筆を販売するとしたら、特許権侵害のリスクはなくなります。しかし、このような製品である場合、使い勝手が悪くユーザーからは支持されないことが推測されます。

キャップに摩擦体がついているペンと、付いていないペンとでは、前者がユーザーからは選ばれるはずです。

4. 市場シェアを独占する意義(まとめ)
今回の記事を書くために、三菱鉛筆株式会社の「ユニボールファントム」を買いに、事務所の近くの大型の文具店など、複数店舗を見て回りましたが、見つけることができませんでした。
これは、今回、販売停止の仮処分の申し立てがされたことというよりは、すでにパイロットコーポレーションが、製品のシェアの多くを占めている状態だったからと言えます。
2010年の販売依頼、ほぼ市場シェアを独占。事業としては大成功と言えるでしょう。
パイロットコーポレーションが特許を取得したのは、2010年です。
そこから本日まで、ほぼ独占的にパイロットコーポレーションは、フリクションボールを販売し続けてきました。独占的に文房具屋に置かれる製品がフリクションボールであることで、「消せるボールペン=フリクションボール」というユーザに刷り込まれ、認知されました。
No1と認知されることで益々売れる。こんなプラスの連鎖が起こったのかもしれません。
特許を取得し、市場を独占することの意義。大企業では当たり前のように行われている戦略。中小企業の社長の新商品も同様に、シェア100%を目指してみては如何でしょうか?

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