ある起業家の方ですが、事業を始め、内容が具体的になり、少しずつであるけれども仕事が進むようになってきました。
SNSなどを通じての認知度も高っていき、これで少しは落ち着くかなと肩の力を抜いたある日のことです。
何となくインターネットでいつも通りに記事を検索していたら、ある業者のウェブページを発見します。そこには、自分が提供しているサービス名と全く同じ名称が使用されていました。
しかも、事業のコンセプトもそっくりです。
「ウチのサービス名が真似されている!」とその方は大変驚いたそうです。
1.他人に自分の商標を真似されることによるリスク
明らかに知名度が上がっていつつあるサービス名をそのまま横取りされていると思ったとき。
ほとんどの方は、
・許せない、少しでも早くサービス名の使用をやめて欲しい
・相手に先に商標申請されたらどうしよう・・
・もし相手に商標権を取られたら、せっかく知名度が上がってきたのに、事業自体を撤退せざるを得ないのか
・訴えられたらどうしよう・・
と考えます。
他人に先に商標申請をされ、その後、商標登録されてしまうと大変です。
あなたが、例え、先に商標を使用していても、逆に訴えられてしまうリスクがあるからです。
実際に、先に使っていたサービス名を他人に取られ、その後、警告状が送られてきたという事例があります。この件では、結果として長年使っていたサービス名を変更せざるを得なくなってしまいました。
上記以外にも、見込み客の方が、自分と間違えて他人のサービスを購入してしまった、
さらに、そのサービスの品質が悪く、自分の会社に苦情が来た
などの実例があります。
2.他人に商標(サービス名・商品名)を真似された場合の対応策
他人に商標を真似されている場合、まず始めやるべきことは、この商標が自分以外から申請されていないことを調査することです。
仮に、誰も自分の商標を申請していない場合は、速やかに商標申請を行うことがとても重要です。
商標申請を行い、サービス名・商品名について商標登録を受けることで、以下のことが可能になります。
・サービス名・商品名の使用の中止:例えば、Webページからサービス名の削除を要求できます。
・損害賠償請求:真似されるおとによって被った損害賠償を請求できます。
・信用回復の措置:新聞などのメディアへの謝罪を要求できます。
3.少しでも早く商標登録する方法
急いで商標を登録したい。権利化させたい。そんなときに「早期審査」という制度があります。
通常の審査結果が商標申請から、9ヵ月ほどの時間がかかるのに対し、早期審査請求をすることで、審査機関を約3~4ヵ月に短縮できます。
便利な早期審査請求ですが、すべての案件において申し込めるわけではありません。以下の条件に当てはまるのか確認が必要です。
1.権利化について緊急性を要する出願
①第三者が許可なしに出願商標の内容に関わる範囲で使用しているかまたは使用の準備を相当程度進めていることが明らかな場合
②出願商標の使用について、第三者から警告を受けている場合
③出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合
④出願商標について、出願人が日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している場合
⑤出願商標について、出願人が国際登録の出願を行う場合
2.出願人が出願商標をすでに使用している商品・内容または使用の準備を相当程度進めている商品・内容のみを指定している出願であること。
3.出願人が出願商標をすでに使用している商品・内容または使用の準備を相当程度進めていて、かつ、特許庁で決められた審査基準になどに掲載されている商品・内容のみを指定している出願であること。
難しい言葉が並んでいますが、まずは第三者による侵害があり早期審査を望む場合にはその証拠となるものを集める必要があります。
また、早期審査は出願する商標に対して出願の段階で進められているサービスの内容でしか申し込みできません。後から、出願人がすでに早期審査で手続きしている商標を使って異なるサービス内容でビジネスを広げようとするとまた追加での商標申請が必要となります。ですので、第三者による侵害ではない早期審査の場合には今後のビジネスの展開まで見据えて判断する必要があります。
そして、特許庁で決められた審査基準になどに掲載されているサービス内容に当てはまるかを正確に示すことが重要です。
4.まとめ
早期審査は商標登録の確約を意味するものではありません。審査期間が時短されてその分、審査にかかる時間は短くなりますが、審査に通らない場合もあります。登録になるのは審査が早く進むことではなく、先に特許庁に出願した商標になります。
そのため、他人よりも早く商標申請をするということがとても重要になります。
早期審査の手続きは慎重かつ細やかな手続きが必要となります。
一方で、サービス名を真似されている場合には、早期審査請求の条件を満たしますので、積極的に活用して、一刻も早く商標登録を受けることをおすすめ致します。