最新の中国への特許出願制度について、まとめています。
なお、日本やアメリカへの特許出願については、下記の記事をご参照ください。
【2018年度最新版】中国特許出願ガイド
出願
特許の種類
発明特許、実用新案、意匠特許
中国特許法は、特許による保護を上記3種類の発明創造に与えていて、1つの特許法で3種類の特許を保護していることが特徴です。
アメリカに近い法体系になっています。
日本やその他の国と比較した場合に、実用新案の出願件数の割合が比較的多いのが、中国の特徴ではないかと思います。
先願主義
特許法9条2項において「二以上の出願人が同様の発明創造について個別に専利を出願した場合、専利権は最先の出願人に授与する」と規定されており、先願主義が採用されています。
したがいまして、中国で特許出願を行う際には、少しでも早く特許出願を行うことが重要になります。
出願書類
必須の書類は、願書、明細書、要約、クレーム4つで、さらに図面を添付することができます。
クレームは、10までは特許庁費用が同一料金ですので、中国へ特許出願する際には、クレームの数は10個までに抑えられる場合には、抑えるようにした方がよいかと思います。
クレームの従属関係は、いわゆるシングルマルチまでは認められていますが、マルチのマルチは認められていません。
出願言語
中国語のみです。
日本語や英語で特許出願することはできません。
日本でいう外国語書面出願のような制度もありません。
PCTの国内移行を中国にする際に、日本のように翻訳文提出特例期間のようなものはありませんので、中国語の翻訳文の準備を早めにしておく必要があります。
出願の種類
通常出願
各国の出願人がその居住地または国籍を有する国において各国の特許庁に提出する特許出願と同様に、出願日に関するいかなる特典もなしに専利局に提出された特許出願
優先権主張出願(パリルート)
外国で最初に出願された日から12カ月以内に優先権主張をして出願が可能です。
分割出願
特許出願中のみならず、特許査定~登録や、拒絶査定後から3ヶ月以内においても、分割出願の手続きが可能です。
ただし、出願が拒絶され、取り下げられ、または取り下げたものとみなされた場合は手続きできません。
国内移行(PCTルート)
PCT出願に基づき出願した中国国内段階における出願日は国際出願日となります。
国内移行期限は優先日から30カ月以内
延長費用の支払いにより、優先日より22カ月または32カ月の期限までに国内移行手続きが可能です。
なお、期間延長手続きは事前に行う必要はなく、期間延長料を中国国内段階への移行時に納付することによって、自動的に2ヵ月猶予されます。
自発補正期限:審査請求後に発行される実体審査段階に入った旨の通知を受領した日から3カ月以内
期間の猶予
中国での特許出願は、パリルートの場合の12ヶ月の優先期間に関しては、救済措置は設けられていません。
一方で、PCTルートの場合には、自動的に2ヶ月まで延長可能であります。
中国特許出願の注意点
中国、台湾、香港、マカオの4ヶ国が、特許制度においては別国として扱われていることに注意する必要があります。
香港とマカオに特許出願する機会は少ないかもしれませんが、台湾は日本メーカーの生産拠点になっていることも多く、注意が必要です。
さらに、台湾はPCTの非加盟国ですので、PCT出願によって各国に特許出願しようと考えているときは、
同時に台湾へのパリルートでの特許出願が必要かどうかを検討する必要があります。
出願後の流れ
出願公開
初歩審査通過後、出願日(優先権がある場合には優先日)から18カ月後に公開されます。
(出願人の請求により早期公開が可能)
初歩審査での補正
審査の結果、特許法及び同細則の関連規定に合致していないと判断された場合、所定の期限までに意見を陳述するか補正をする必要があります。
期限内に応答しなければ、当該出願は取り下げられたものとみなされます。
また、出願人による意見陳述または補正の後、依然として当該関連規定を満たしていなければ、拒絶査定されます。
これに不服がある場合、出願人は拒絶査定不服審判を専利復審委員会に請求することができます。
更に、専利復審委員会の決定に不服がある場合には人民法院に提訴可能。
審査請求
出願日(優先権がある場合には優先日)から3年以内に手続きが必要です。
なお、優先権主張してなされたPCT出願の国内移行手続きの場合には審査請求の時間的余裕が少ないことに注意する必要があります。
優先日より1年以内にPCT出願を行い、優先日より30カ月以内に国内移行手続きをしようと考えると半年程しか時間的余裕がありません。
実務的には、国内移行と同時に審査請求まで行ってしまうのが一般的ではないかと思います。
早期審査制度
ありません。
審査意見通知(オフィスアクション)に対する応答
応答期限
第1回審査意見通知 :4カ月
第2回以降審査意見通知:2カ月
中国では、2回目以降の拒絶理由通知(OA)に対して、応答期間が2ヶ月と非常に短くなっています。
ただし、審査意見通知の応答期間満了前に1カ月または2カ月の期間延長が1回可能です。
延長費用も、あまり高くありませんので、準備が間に合わない場合には、
応答期間が過ぎる前に、延長手続きをしておくことをおすすめいたします。
拒絶査定後の復審(再審査)制度
復審の流れ
拒絶査定に対し不服がある場合、拒絶査定を受け取った日から3カ月以内に復審請求が可能
↓
専利復審委員会による復審(再審査)の後、決定が出願人へ通知される
↓
専利復審委員会の決定に対し不服がある場合は通知を受け取った日から3カ月以内に、人民法院に訴えを提起することが可能
復審請求の手続き
復審請求の際は、復審請求書の提出、請求の理由の説明、及び必要に応じて証拠を添付しなければならない。
復審請求書が方式違反の場合は、指定された期限内に補正をしなければならない。
期限前に補正をしなければ、その復審請求書は提出されなかったものとみなされる。
復審請求時、または専利復審委員会からの通知に応答する際、特許出願について補正が可能
ただし、補正は、拒絶査定または復審による通知が示す不備を解消するものに限られる
復審手続きにおける補正
復審請求人は、以下の場合に専利出願書類に対する補正を行うことができる
①復審請求時
②復審通知書(復審請求口頭審理通知書を含む)への応答時
③口頭審理への参加時
前置審査
専利復審委員会は、受理した復審請求書を国務院特許行政部門の元の審査部に戻し、審査させる。
元の審査部が復審請求人の請求に基づいて原査定の取り消しをするときは、専利復審委員会はこれに基づいて復審決定を行い、復審請求人に通知する。
復審通知書への応答及び出願書類の補正
復審通知書が発行されると、復審請求人は、当該通知書を受領してから1カ月以内に、当該通知書で指摘された欠陥に対し書面で応答しなければならない。期限内に応答しなければ、その復審請求は取り下げられたものとみなされる。
応答期限の延長
最長2カ月の期限延長が1回に限り可能です。
復審決定
復審決定の種類
①復審請求不成立の場合、拒絶査定を維持します。
②復審請求成立の場合、拒絶査定を取り消します。
③出願人の補正の結果拒絶査定で指摘された欠陥が解消した場合、補正書類に基づいて拒絶査定を取り消します。
専利復審委員会が復審を行い、復審請求が特許法及び規則に従っていないと認められたときは、復審請求人に通知し、期間を指定して意見を述べるよう求める。期限前に応答しないときは、その復審請求は取り下げられたものとみなされる。意見を述べまたは補正をし、専利復審委員会がなお特許法及び規則に従っていないと認めたときは、原拒絶決定を維持する復審決定をする。
専利復審委員会が復審を行い、原拒絶査定が特許法及び規則に従っていないと認めたとき、または補正を行った特許出願が原拒絶査定が指摘する不備を解消したときは、原拒絶査定を取り消し、元の審査部が引き続き審査を行う。
復審請求人は専利復審委員会が決定を行うまで、その復審請求を取り下げることができる。
復審請求人が専利復審委員会が決定を行うまでにその復審請求を取り下げたとき、復審手続きは終了する。
復審決定に対する不服
復審請求人は、その決定に不服がある場合には、復審決定書受領してから3カ月以内に、人民法院に提訴することができる。
登録
特許査定を受け取った日より2カ月以内に登録手続きが必要
期限内に手続きをすると、特許証が発行され、期限内に手続きをしなければ、特許を受ける権利を放棄したものとみなされる
異議申し立て制度
なし
ただし、後述する「無効宣告」の手続きを、利害関係無しで、何人も請求することができます。
存続期間(延長不可)
特許:出願日から20年
実用新案:出願日から10年
登録になった年から年金の納付義務が発生する
侵害訴訟
立証責任
中国の民事訴訟法64条は「当事者は、自己が提起した主張について証拠を提供する責任を負う」と規定しています。
同条の規定により、専利権の侵害紛争において、訴えを提起した専利権者又は利害関係人が立証責任を負います。
刑事上の罰則
他人の特許を盗用したときは、民事責任を負う以外に、特許事件管理機関の責任においてその行為の是正を命じることができ、またその命令を公告することができる。
損害賠償額の算定
特許侵害があった時の賠償金額は、①特許権者が侵害により受けた実際の損害に基づいて算定し、②実際の損害の確定が困難な場合、侵害者が侵害により得た利益に基づいて算定する。③侵害を受けた損害または侵害者が得た利益を算定することが困難な場合、特許の実施料の倍数を乗じたものを参酌し、合理的に確定する。
特許権侵害とならない場合
以下のいずれかに該当するときは、特許を侵害するものとは認められない。
a. 特許権者が製造し、輸入または特許権者の承諾を得て製造し、輸入した特許された物または特許された方法により直接取得した物が販売された後、その物を使用し、販売を承諾し、または販売すること
b. 特許出願日前にすでにその物を製造し、またはその方法を使用し、またはすでに製造し、または使用するのに必要な準備を終えていたときは、その範囲内において引き続き製造し、または使用すること
c. 臨時的に中国の領土、領海、領空を通過する外国輸送手段が、それが属する国と中国間で締結した協定またはこれらの国が共に加盟している国際条約に基づき、または互恵の原則に従い、輸送手段自体の必要のためにその装置と設備に関する特許を使用すること
d. 専ら科学研究または実験のために特許を使用すること
特許権者の承諾を得ることなく製造され販売された特許された物または特許された方法により直接取得した物であることを知らずに、それを生産経営を目的として使用しまたは販売したが、その物が合法的な出所源を持つことを証明できるときは、賠償責任を負わない。
無効手続き(専利権の無効宣告)
日本でいう無効審判に類似する制度で、「無効宣告」というものがあります。
日本との違いとしては、異議申し立て制度がない影響で、請求人に制限がなく、何人も請求できるところです。
日本と同様に、無効になればはじめからなかったものとみなされますし、訂正制度もあります。
審理は、原則書面審理ですが、請求により口頭審理とすることもできます。