半年前に、自転車を盗難されるということがありました。
自転車を盗難されてしまうと、当然、私は、その自転車には乗ることができません。
一方で、特許、商標権、著作権などの知的所有権(無体財産権)は、基本的には目に見えないものです。
そのため、多数の人が同時に使用することが物理的には可能です。
複数のサイトで、漫画が違法にアップロードされるということが、過去にあったことをご存知かと思います。
このように知的所有権は、目に見えない権利なので、誰が本当の権利者なのか、わからなくなるということが起こります。
一方で、権利として、取得する必要がない、申請したとしても単なるコストにしかならない商標もあります。
今回は、権利として、取得すべき商標とはどんなものなのかについて、商標権の性質と、商標権の機能を交えながら解説させて頂きます。
1.商標権の無体財産権としての性質
商標権も、知的所有権(無体財産権)ですので、同じようなサービス名や、商品名が同時に複数の人に使用されるということが起こります。
その場合、著名な商品やサービス名のブランドほど、真似されやすくなるということが起こります。
また、複数の業者が、同じような商標を使用すると、需要者が、混乱するということが起こります。
上記のようなことが起こらないように、特許庁に商標権を登録することで誰の権利なのかを明確にできるようになっています。
登録をすることで、権利者以外は、商標を使用できなくなるため、これによって、模倣している業者を一掃できるようになります。また、紛らわしい名称を使用されなくなるため、需要者が混乱するということがなくなり、自らのブランドを守ることができるようになります。
2.商標が4つの機能について
次に、商標には、以下の4つの機能があります。
① 自他商品識別機能
自分の商品・サービスと他人の商品サービスとの違いを需要者が認識する際の、目印となる機能です。
② 出所表示機能
同じ商標をつけた商品・サービスが同じ会社から提供されたことを示す機能です。
③ 品質・質保証機能
同じ商標がついた商品・サービスを購入すれば、過去に体験したのと同じようなレベルの品質であることを示す機能です。
④ 宣伝広告機能
商標がつけられることで、商品・サービスの内容と商標とが顧客にセットで記憶され、ブランドの情報伝達機能が高まります。これによって、需要者の購買意欲を起こさせることが可能になります。
3.権利として取得すべき商標について
商標には、上述した、① 自他商品識別機能 ② 出所表示機能 ③ 品質・質保証機能
④ 宣伝広告機能 という機能があります。
つまり、実際に商品・サービスの内容として、顧客に認識され得るものでなければ、権利化する意味が乏しくなってしまいます。
商品・サービスの内容として、顧客に認識されないものとしては、以下のものがあります。
・そもそも商品、サービスに対して使わないもの
・商品、サービスの目印としては認識されないもの(一般用語、商品・サービスの説明文として認識されてしまうもの)
4.商標の財産的な価値について
良い商品・サービスを提供していることを前提として、商標は、基本的には使えば使うほど、需要者の信用が蓄積する性質があります。また、需要者の目に触れれば触れるほど認知度が高まるという性質があります。
商標の財産的価値は、商標に蓄積した需要者からの信用や、認知度であると言えます。
このように蓄積した商標の財産的価値は、土地や不動産などのように取引の対象となります。
例えば、ライオンは、解熱鎮痛薬「バファリン」の商標権を304億円で買収したということがありました。
【登録番号】 第1996897号
次の事例ですが、2015年にファッションショーなどで有名な東京ガールズコレクションの商標権が、8億円で株式会社ディー・エル・イーに譲渡されたということもありました。
東京ガールズコレクションの商標権の事例につきましても、この商標に強いブランド力が
あったからと言えます。強いブランド力がある商標を付けるだけで、顧客の目を引き、商品
の販売が容易になるという実情があります。
例えば、同じデザインの鞄であっても、高級ブランドのロゴが付いているだけで、普通の鞄
の何倍もの価格で取引されたりすることもあります。
東京ガールズコレクションのブランドについても、美に関する情報の発信源として
20~35歳の女性なら94%が知っているという著名なものでした。
商標権を購入した株式会社ディー・エル・イーは、「秘密結社 鷹の爪」などで有名な会社で
すが、「秘密結社 鷹の爪」のキャラクターのブランド力でパートナー企業や自治体と連携
することで、収益を上げている会社です。
今後、東京ガールズコレクションの商標権を活用して、EC事業などの女性向けのマーケティングプラットフォームや、化粧品メーカーとのコラボレーション、海外パートナーとの共同事業を展開していくと報道がされています。このようなブランド力を活かした展開をすることによって、購入した8億円を回収する見込みがあったという表れであると言えます。
【登録番号】 第5006411号
これらは、非常に稀な例ではありますが、このように商標権が高値で売買されるという
ことも実際にはあります。
今回は、商標権の性質・機能とともに、本当に取るべき商標とはどのようなものなのかについて解説させて頂きました。
商標は、無駄な申請をせず、本当に必要なものだけ申請をすることが大切ですので、ご参考にしていただければと思います。