良くある勘違いとして、「法人を設立(登記)したのだから自分は自由にその会社名を使える」というものがあります。
私自身も自らの法人を設立したという経験があります。登記をするに際しては、同じ法人名が登記されていないのか法務省でチェックされているということもあるため、その気持ちも理解できます。
しかし、法務省でチェックしているのはあくまでも、同じエリア(地域)で同じ法人名がないか否かです。そのため、例えば横浜でABCという法人が設立されていても、同じABCという法人を東京では設立できてしまうということになります。
また、会社の登記の管轄が法務省であるのに対し、商標権が登録されているかの管轄は特許庁(経済産業省)となります。
そのため、会社の登記と、商標権の登録との関連性は全くありません。さらに、商標権が、商標権者のみが商標を使用できるという独占権であるのに対し、登記された会社名についてそのような性質はありません。
ですので、これから使おうとしている会社名が登記されているからと言って安心はできません。実際に、会社を設立した後に、同じ会社名を使っている商標権者から警告状が送られてくるということは珍しくありません。
そのため、会社名については、登記する前に商標調査をしておくということが重要です。
会社名については、
「J-PlatPat」を活用して商標調査を行うことで、候補の社名が使えるかどうかを知ることができます。検索に慣れれば、5分もあれば、候補の商標の登録状況を知ることができます。
「J-PlatPat」を活用した簡易な調査そのものは、決して難しいものではありません。また、「J-PlatPat」そのものは無料で利用できる非常に便利なツールです。
是非ともこのツールを事業の発展と、安定性の維持のために、使える方法を身に着けて頂ければと思います。
全体の傾向としては、化粧品、美容サロン、ECショップにおける商標権のトラブルがとにかく多いということです。
昨今は、会社員をしながら副業で、ECショップや、美容サロンを開業する方が増加しています。これらについては、起業をしやすいということが挙げられます。例えば、ネイルサロンについては、マンションを借りたり、自宅でも開業ができます。
ECショップに至っては、店舗などがなくても開業が可能です。
また、美容サロン、ECショップについては、業界の特徴として、サービス名や、商品名が真似されるということが良くあります。
また、これらについては、ECサイトや、ホットペッパービューティーなどのサイトを通じて、商標権を侵害しているということが簡単に発見されてしまうという特徴があります。
サービス名や商品名が真似されるタイミングとしては、自分が販売している商品・サービスの認知度が高まったときである言えます。
また、商品・サービスの認知度が高まらなくても、そもそも真似をされやすい名称というものもあります。
特に、化粧品のブランド名については、一定の規則性があるため、同じ名前が選択されることが多いです。また、商品の性質上、ブランド戦略が非常に重要になります。例えば、ブランドの価値が化粧品ほど重視されない業界であれば、商標権を侵害されてもそのまま放置されるというケースもあります。
しかし、化粧品の場合、間違えて化粧品を買われたり、品質が低い模造品が販売され続けるという事態が見過ごされるということはまずありません。もし、商標権を侵害していることが商標権者に知られれば、高い確率で販売の差止請求をする旨の警告状が送られてしまうということになります。
また、協会名、資格名についても、運営上、信用が求められる協会では重要になります。協会名ついて商標権を取得することで、安心して協会は協会名を継続して使用できます。また、資格名について商標権を取得しておくことで協会員は、安心して資格取得の申し込みができますし、資格取得後は、資格名を名乗ることが可能になります。
上述した、化粧品、美容サロン、ECショップ、協会に関わらず、以下の特性に当てはまる業界には、商標権のトラブルが多い可能性がありますので、自らの業界が当てはまるかをチェックしてみると良いと言えます。
・開業のハードルが低い。
・価格競争が激しく、同業との差別化が重要。
・商品、サービスの内容について模倣が多い。
・商品名、サービス名がインターネット上に露出しやすい。
・商品、サービスの提供に際してブランド力(信用)が重要である。
・商品、サービスのネーミングについて規則性がある。
上記のいずれかに当てはまる業界については、ブランド戦略上、商標権の取得を検討することが重要になってきます。
また、自身も新規に商品・サービスの提供を開始する際に、事前に商標が他社にチェックすることが重要になってきます。