特許申請ノウハウ

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模倣のイメージ

切り餅事件

切り餅の特許!

トースターで持ちを焼いていたら、トースターの中で餅が垂れて、中を掃除するのが大変だという経験をしたはありますでしょうか?

従来、お餅を焼くと予期せぬ方向に膨れ上がったり、爆発したり、周辺に餅が散らばって、後片付けが大変なことがありました。


越後製菓がお餅の周辺に切り込みを入れたことを特徴とする特許を取得しました。これによりお餅は、図のように、切り込み部から、上に向かって伸びて膨らみ、上記のようなことは起こりにくくなりました。

つまり、切込みを入れることで、側面から膨らんだ餅が垂れてしまうということが起きにくくなったのです。

業界常識

一方、お餅を販売しているサトウ製品は、同時期に異なる方向に切り込みを入れた切り餅を販売していましたが、越後製菓から警告を受ける事態となりました。
図のようにサトウ製品は、越後製菓の特許のように側面に切り込みをいれるのに加えて、上面にも切り込みを入れていました。

そもそもの話ですが、お餅に切り込みを入れることは、同業者間では、普通に行われていることで、特許なんてものではないという空気がありました。

特許権侵害

その後、地方裁判所で特許権の侵害の有無について争われた結果、サトウ食品の切り餅は、越後製菓の特許の特許請求の範囲に含まれないと判断されました。

地裁の判断では、側面だけではなく、サトウ食品の切り餅には上面にも切り込みが入っているため、越後製菓の特許とは異なるものという判断がされたのです。


しかし、これで、一件落着!となりませんでした。地裁の判断に納得のいかない越後製菓は、知的財産高等裁判所に控訴しました。その審理において、知財高裁は、地裁とは、逆の判断としました。

すなわち、サトウ食品のお餅は、越後製菓の特許の請求の範囲に属する。結局、サトウ食品の切り餅は、特許権の侵害ということになり、約15億円の損害賠償が認められました。

高裁では、結局は、側面に切り込みが入っているという点では、サトウ食品の切り餅が越後製菓の特許の権利範囲という認定になりました。

先入観にとらわれず、専門的知識を有する弁理士にご相談することをお勧めします。