第86回のテーマは
「商標は使っていなくても登録できるの?」です。
商標は、実際にまだ使っていなくても登録できるのか。これは商標の相談を受けていると、比較的よく聞かれる質問です。結論から言うと、日本では現時点で使用していない商標であっても登録することは可能です。
日本の商標制度は「登録主義」という考え方を採っています。つまり、今使っていなくても、これから使用する予定があるのであれば、まず登録を認めるという仕組みです。
商品やサービスがまだ世の中に出ていない段階で商標出願をすることは珍しくありません。例えば、新しい商品名を考えた段階で、発売前に商標を出願しておくという流れです。場合によっては、将来の事業計画などを示し、「この時期に使用する予定があります」と説明することで、使用予定があると判断されることもあります。このように、出願時点で必ず使用していなければならないわけではありません。
この考え方は日本だけではなく、多くの国で採用されています。ただし、国によって制度の考え方が異なる場合もあります。代表的なのがアメリカです。アメリカでは、商標を登録するときや、その後に権利を維持するときに、「実際に使用している証拠」を提出する必要があります。米国特許商標庁に対して、使用していることを示す資料を提出する仕組みになっているのです。

日本では登録主義が採られているため、商品発売より前に商標を押さえておく企業も少なくありません。例えば、キリンのビール「晴れ風」は、発売が2024年4月でしたが、商標は2023年11月の段階で登録されていました。商品が世の中に出る前に権利を確保しておくことで、安心してブランド展開ができるわけです。こうした準備の仕方を見ると、商標がブランド戦略の重要な一部になっていることがよく分かります。
ただし、登録できるからといって、使用しない商標をいつまでも放置しておくわけにはいきません。もし、使用されていない商標が長期間残り続けると、本当にその名前を使いたい人が後から出てきたときに登録できなくなってしまうからです。
そこで商標法には、「不使用取消審判」という仕組みが用意されています。一定期間使用されていない商標については、取消しを求めることができる制度です。この制度については、次回もう少し詳しくお話ししていきます。
さて、ここからは恒例の音の商標のコーナーです。
【ENEOS】「ガスでホッと、くらしにグッと」燃料やガソリンスタンドのサービスなど、かなり幅広い区分で権利が取得されており、企業全体のブランディングとして活用されている例です。会社のキャッチフレーズやブランドメッセージは、単なる言葉以上に企業イメージと結びつくものですので、取り扱う商品やサービスに合わせて広く権利を確保するケースも多く見られます。

今回は、使っていない商標でも登録できるのかという基本のお話でした。制度の考え方を知っておくと、商標の使い方やブランドの守り方が見えてきます。
次回は、使っていない商標が実際にはどう扱われるのかという続きのお話です。
では次回をお楽しみに!
ApplePodcasts https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%E3%81%86%E3%81%9F%E3%81%86%E5%95「 %86%E6%A8%99%E5%BC%81%E7%90%86%E5%A3%AB/id1751209371
Spotify https://open.spotify.com/show/0chaNW5BwqcprbIJuwhqsj
Amazonミュージック https://music.amazon.co.jp/podcasts/5a44a45e-92b9-4416-a4ea 11315989ce2e