商標申請数は年々増加しているのはご存知でしょうか?
2017年度は、2016年よりも申請数が2割程度、増加しているとのことです。
特に、中小企業・小規模事業者による申請が増加しています。商標に関する権利意識が、大企業のみならず、中小企業・小規模事業者に広がってきている傾向が現れていると言えます。
一方で、中小企業・小規模事業者には商標とはどんなものなのかについての認識が、外国に比べるとまだまだ浸透していないといえます。
「商標権を取得していないことで、警告状が届いた。」
「自分の店と間違えて近隣のライバルの店にお客様が行ってしまった。結果として自分のところにクレームが入った。」という相談は実際に良くあります。
「重要なのはなんとなくわかるけど、費用をかけてまで申請する必要があるのか?」という方向けに、今回は、商標登録した場合のメリットやしなかった場合のデメリットについて解説します。
1.商標登録した場合のメリットについて
1-1.名称を安心して使用できるようになります。
商標権を取得した名称については、商標権者のみが使用できるようになります。商標権者のみが使用できるということは、他にはこの名称を誰も使用できないということになります。
また、他人が同じ名称で商標権を取得することができないため、他社から侵害していると言われなくなります。
一方で、「自分が考えた名称を自分が先に使っているのだから、文句を言われる筋合いがない」と考える方もいらっしゃると感じることがあります。
そのようなことはなく、たとえ自分が先に名称を使用していたとしても、他人に先に商標権を取られてしまえば、後の祭りです。
例えば、私が、クライアント様の中には、先に商標を使っていたのに、しばらくしたら似た名称を使っている競合からいきなり警告状が届いたという事例があります。
サービスを開始したばかりだから油断できるというものでもありません。他の方は、開業した直後に、商標権侵害で訴えられ、その賠償額が1000万円だった、ということが実際にありました。このケースでは、1000万円という損害賠償の支払いができず、最終的には、会社を一旦畳むということになりました。
このように、他人の商標権を侵害してしまうと、名称の変更を余儀なくされるのはもちろんのこと、会社自体を廃業する(一端、潰さざるを得ない)という事態になりかねません。特に、近年は、インターネットの普及に伴い、Webページ上で商標権を侵害していることが発見されやすくなってきています。
攻撃は最大の防御というように、商標権を取得することは、経営上の一リスクを排除するために重要であり、予期しない損害賠償などの問題を避け、安定して事業を継続できるというメリットがあります。
1-2.他人の商標の使用をやめさせることができるようになります。
商標権を取得することで、自分の商標を他社が使用している場合、使用の中止を請求できるようになります。
自分の商品・サービスの認知度が向上してくると、商品名やサービス名が真似されるということがあります。また、認知度が向上しなくても、良いネーミングであるほど真似されやすいという性質があります。
商標権が侵害される場合のケースとして多いのは、自分の商標をインターネット上で使用されるということです。
昨今は、インターネットの普及に伴い、なんとなくネットサーフィンをしていたら、自分の商標が真似されていることに気づくことが増えています。
もし自分の商標が侵害されていることを見つけた場合、警告文をメールなどで相手に送付することで、インターネット上から自分の商標を含むWebページの削除を請求することができます。
1-3.SEOの効果
これまで説明してきたメリットは商標権を所有することによる、直接的なメリットになります。
他の副次的に発生するメリットとしては、意外と知られていないのですが、商標権を取得することで、権利化したワードについて、SEOの効果があるケースがあるということです。
なぜ、SEOの効果があるのかというと、商標権を取得することで、サイトの紹介文を検索ユーザーおよびロボットに伝えるMETAタグの削除も請求できます。
これによって、商標権を取得したワードで検索した場合に、自分以外のサイトがヒットしない状態を作ることができます。そして、自分の商標が記載された他者のWebページが存在しなくなるため、自分の商標などで検索した場合に、ご自身のページを最上位に表示させることが可能になります。
このように、商標権も活用のしやかたによっては、SEOの効果も得ることができます。
1-4.ブランディング効果
商標権を取得することで、しっかりとした企業活動をしているという印象を持ってもらえるため、取引先や顧客などの信用度が向上します。また、名刺などに®マーク(登録商標の意味です)をつけることができますので、商標権を取得していることを多くの方に認識してもらうことができます。
また、商標権を取得することで、他社の商標権を侵害していないことの裏付けにでき、他社とのアライアンスを組みやすくなるというメリットがあります。特に、販売のパートナーとして大企業とアライアンスを組むには、商標権の取得の有無が条件となることが少なくありません。アマゾンのブランド登録については、商標権の取得が前提条件となっています(詳しくは、こちら→「商標申請とAmazonブランド登録との関係」)。
また、製品の商標であれば、製品のパッケージに表示されることが多いです。自分の商標を使用している他社製品が存在した際に、これら製品を廃棄するように請求することが可能になりますので、自分の商標をつけた他社製品が市場に存在しない状態にでき、ブランドによる競争力を維持できます。
2.商標登録しない場合のデメリットについて
2-1.他人から商標を取得されてしまうということがあります。
商標は出願した早いもの勝ちです。そのため、製品名やサービス名を先に使っていても、あとで他社に商標権利を取られたら、製品名・施術名・サービス名を使えなくなってしまいます。
また、業界によっては、模倣品を製造、先に商標を取得し商標の買取を持ちかける業者が存在します。
関係ない方が、PPAPの商標を申請してしまったことについてはご存知の方も多いかと思います。
2-2.訴訟などのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
他人の商標権を侵害すると、損害賠償請求をされたり、懲役10年以下、罰金1000万円以下またはこれらが併科される可能性があります。
弊所にも警告状が届いたなどの相談は多数寄せられおり、商標に関するトラブルや訴訟は他の知的財産権の中でも、圧倒的に多い状況です。
商標権を取得しない場合、上記のようなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
3.まとめ
今回は商標権を取得するメリットについて解説しました。
商標権は取得する費用と、特許庁に支払う実費を含めても、1月あたり900円程度のコストです。
その程度のコストで上記のようなメリットが得られるため、非常に費用対効果が高いと言えます。
「自分のブランドを守り、他社と差別化したい」
「安定してビジネスを継続したい」
「SEO効果を得たい」
「自社の信用度を向上させたい」
という方、お気軽にご相談頂ければ幸いです。