特許申請ノウハウ

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商標登録前の図形商標の検索のしかた

商標というと、「単なる文字のみ」の商標を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
 
しかし、「図形」あるいは「図形と文字等の結合」したものも登録になります。
 
一方で、似た図形がすでに登録されていると、登録を受けることができないばかりか、その図形を使用できないというケースもあります。
 
本日は、申請前の図形商標の調査方法について、解説させて頂きます。

 

あなたが「図形を使用する商標」で登録を希望する場合、例えば、ペガサスの絵が入った商標(ペガサスの絵のみでも可能です)で登録を希望するとしましょう。

しかし、すでにその使用したい「ペガサスの図形」と同じか似たような図形を使用して、第三者によって商標登録されている可能性もあるのです。

その場合は、そのすでに存在する図形を引用例として、登録を拒絶されてしまいます。

 

そして、そのような「ペガサスの図形」をすでに使用している登録商標を探そうと思ったとき、文字だけで検索をしても思うように探すことはできません。特許庁情報プラットフォーム「J-Plat-Pat」で、文字による検索(称呼検索)で探そうとすると、「ペガサスの文字」を使用した商標は探すことはできますが、図形(絵)まで探すことはできないからです。

 

では、どうすればいいのか・・・

 

そこで、「図形等商標検索」という検索方法を用いることによって、図形商標の効率的な検索が可能になります!

 

今回は、初心者の方でも誰でもできる図形等商標検索の方法について、解説させて頂きます。

 

 

特許庁のデータベースである「J-Plat-Pat」を利用してすでに登録されている図形等商標を検索してみましょう。
まずは、特許庁情報プラットフォーム「J-Plat-Pat」を開きましょう。
下記のリンクをクリックして「J-Plat-Pat」のトップページへお進みください。
特許庁情報プラットフォーム「J-Plat-Pat」へ
特許庁情報プラットフォーム「J-Plat-Pat」トップページです。

上のメニューから「Ⓡ商標」をクリックします。

 

 

次に「4.図形等商標検索」をクリックします。

 

こちらの「図形等商標検索」で簡単に確認できることは下記の通りです。

 

そこで今回は、例として、「ペガサス」の図形を、「コーヒー」を指定商品として使用した商標登録が有るか無いかについて、図形等商標検索をしてみようと思います。

 

検索する大きなポイントは
①「ペガサス」という図形で商標登録があるか
②「ペガサス」という図形で商標登録があれば、指定商品「コーヒー」で登録があるか
(サービス分野のことを特許庁の登録基準では「区分」として扱っています。全区分45区分あり、その中で「コーヒー」は第30類に含まれ、類似群コードは29B01になります。)

 

まず、検索するにあたり上記画面の中の「図形等分類」の3つの欄のうち少なくとも1つを埋める必要があります。しかし、この分類は特許庁の基準によって行われており、ペガサスがどのような図形として分類されているのかについて、多くの方はわからないと思います。

 

したがって、ペガサスがどのような図形として分類されているのかをまず把握する必要があります。上記画面の上方にあります「図形等分類表」のタブをクリックしてみましょう。

 

すると、次のような画面にたどり着くことができます。

 

この「大分類」という項目のなかで、「ペガサス」が含まれていそうなものを検討します。すると、ペガサスは「4 超自然的・伝説・空想又は確認できない生き物」に含まれることが予想されます。よって、上記画面で、「4 超自然的・伝説・空想又は確認できない生き物」の左側にある矢印のタブをクリックします。

 

すると、上記のような画面が出てきます。

 

①ここで、今回の検索対象であるペガサスが見つかったので、当該「4.3.5 ペガサス(翼を有する馬)」という項目をクリックします。

 

②クリックすると画面下方にある欄に自動的にコード番号(今回は「4.3.5」になります)が表示されます。

 

③その番号が表示されていることを確認した後に、右側にある「セット」のタブをクリックします。

 

以上の操作により、上記のように、図形等分類1の欄にペガサスのコード番号である4.3.5 がセットされました。この状態で「検索」タブをクリックしてみましょう。

すると、ヒット件数が280件あることが判明します。

 

この段階で検索を進めていっても構いません。しかし、280件ですから探すのに手間がかかりそうです。

 

したがって、今回の検索対象である指定商品「コーヒー」をさらに追加してみたいと思います。

 

上記の画面のように、「類似群コード」の欄に「コーヒー」の番号である29B01を記入してみました。(ちなみに、コーヒーの類似群コードが29B01であることは、別の方法によって把握することができますが、今回は割愛します。)

 

この状態であらためて「検索」タブをクリックしてみましょう。

すると、ヒット件数が4件であることが判明します。

 

つまり、指定商品「コーヒー」を追加することによって280件から4件まで検索対象を絞り込むことができたということになります。

 

今回は、うまく絞り込むことができましたが、場合によってはあまり件数が絞れなかったり、逆に絞りすぎて「0件」となったりすることもあります。(ただ、0件ということは検索対象の先行登録商標が存在しないということなので、悪いことではありません)

 

ほどよい件数にうまく絞り込みたい場合は、追加した指定商品を変更してみたり、さらに指定商品を追加してみたりすると良いでしょう。(例えば、「コーヒー」のほかに「サンドイッチ」を加えたりしても良いでしょう)

 

なお、図形を追加して絞り込むことも可能です。(例えば、ペガサスのほかにも「星」の図形を含めた商標を希望していたとすると、「星」を先述した方法で図形等分類の欄に追加してみると良いでしょう)

 

上記画面で「一覧表示」タブをクリックすると、次の画面になります。

こちらの画面で探したい図形商標を見つけることができます。

 

・出願/登録番号:こちらの商標が出願されて登録になっているかを知ることができます。
登録 000000と表記されている商標はすでに登録済みの商標です。
商願 年号-000000と表記されている商標は審査中の商標です。しかし、オンラインでの検索結果にはタイムラグがありますので、商標登録になっている可能性があります。
また、年号があきらかに古い場合ですと登録にいたらなかったことが確認できます。
国際登録 000000と表記されている商標は海外から日本の特許庁へ出願をして登録になった商標です。
・商用(検索用):こちらは登録されているもしくは登録を希望している商標を確認できます。

・称呼(参考情報):こちらは商標がどのような称呼で登録されているか確認できます。
・区分:こちらは商標がどのような内容で登録されているか確認できます。
特許庁で決められている区分は全部で45区分あります。
<特許庁情報プラットフォーム「J-Plat-Pat」区分詳細ページへ>

 

今回の、図形等商標検索の結果からしますと
①「ペガサス」という商標の登録例は多数ある
②「ペガサス」という商標でのコーヒーに関しての登録もあるがかなり少ない

ということから「ペガサス」での商標登録できる可能性は高いことが確認できます。
しかし、登録の可能性は高いものの、図形の類否判断は容易ではなく、希望する図形と先行登録商標が同一・類似と判断される可能性も場合によってはあります。つまり、そのような場合は先行登録商標を引用例として、登録を受けることはできません。
ただ、明らかに同一・類似だと思われるような場合でも、少し名前を変えたり、ロゴのデザインを変えることで、登録できるようになるケースも珍しくありません。

なので、一見難しそうな場合でも、あきらめずにまずは弁理士にご相談されることをおすすめします。

 

 

 

続いて、この図形等商標検索について、少し留意していただくところがありますので、解説したいと思います。

 

それはまず、自分が登録を希望する商標に使用する図形が、「どのような要素を持っている図形なのか」を正しく認識することです。

 

例として、次のような図形を考えてみたとしましょう。

(登録商標第4254168号)

 

実際には、この図形は登録になっているものですが、仮にあなたがこの図形を考えて、これを使用した商標で登録を希望しているとしましょう。この場合、この図形と同一・類似になりそうな図形を検索によって探す必要があります。

 

先ほどの例は、「ペガサス」という、わりと特徴がはっきりしたものでした。

しかし、今回の図形の特徴はどうでしょうか。「ペガサス」と比べると特徴がわかりにくいと思います。一体どのような要素を持っているものでしょうか?

 

検討していただければ、おそらく、

①コックさん

②人間の姿をした架空のキャラクター

というのが、この図形のモチーフであるだろうと認識することができると思います。

 

すなわち、それがこの図形における「図形が持っている要素」になります。

そして、この要素を先述しました「図形等分類表」の画面から見つけ出し、コード番号をセットして、図形等商標検索を行えばいいわけです。

 

そこで、特許庁は、この図形をどのような要素を持っている図形だと分類しているか見てみましょう。

この画面のうち「(531)図形等分類」の欄を見てみましょう。

 

2.1.11 肉屋、料理人、ウエイター、パン職人

3.7.21.99 その他種類を特定できない鳥

3.7.25.01 擬人化した鳥

4.3.20 フェニックス、その他の伝説の動物

4.5.5 その他の確認できないものの擬人化、その他人間の姿をした空想上のもの

9.7.1 帽子

9.7.19 コック帽

 

と、なっています。

 

「料理人」とか、「コック帽」とかは、まさにモチーフ通りの要素であると思います。また、「帽子」があることから、いわゆる上位概念で分類コードを付与していることもわかります。

 

しかし、その他はどうでしょうか。

「種類を特定できない鳥」と言われれば確かにそうかもしれませんね。

 

さらに「フェニックス」とあるのですが、この図形をよく見てください。

 

全然違うのでは・・・

 

というツッコミを入れたくなりますね。

「伝説の動物」と言われても、という感じです。

 

ツッコミどころも確かにあるかもしれませんが、特許庁の基準は概ね正しいものです。また、これはあくまでも特許庁の「分類の基準」にすぎませんし、そもそも分類コードは権利範囲には全く影響ありませんので、あまり気にする必要もないかと思います。

 

ちなみに、前記「フェニックス」について、当該分類コードを記入して、検索してみますと、次のような画面が出てきました。

ここで、例えば6番の登録商標は、たしかに「フェニックス」っぽい形をしていますね。「っぽい」という曖昧な表現をしたのは、そもそも「フェニックス」がどういう形なのか、厳密にはわからないからです。

 

それでも、「フェニックス」の形のイメージというものは、社会通念に照らしてなんとなくではありますが、共有されているものと思います。現に、上記画面で6番以外のものも大体似たような形の鳥が描かれています。

 

ここで、あらためて14番を見てください。「フェニックス」として検索した結果ですが。

 

これ、フェニックスなのか・・・

 

そのように思った方もおられると思います。このあたりが、商標の面白いところであり、また、難しいところでもありますね。

 

なお、「図形が持っている要素」が多く含まれる場合もあります。

例えば、先述したペガサスについて上記画面の3番のような図形を見てみましょう。

(登録商標第5327429号)

この図形、一見してもたくさんの要素で構成されていることがわかりますね。

 

実際に、詳細を見てみると以下の通りです。

先ほどと同じように、図形等分類のコードを見てみましょう。

 

1.1.1; 星

1.1.5; 四つ以上の星

1.1.10.2; 六つ以上の先端を有する星

1.7.1; 満月、いくつかの月

1.7.6.1; 三日月、つなぎ月(三日月の一種で細い部分が繋がっている月)

1.7.8; 動物を伴う三日月又は半月

1.7.12; その他の図形要素を伴う三日月又は半月

1.11.12; 星空

4.3.5; ペガサス(翼を有する馬)

7.5.1; ピラミッド

26.1.1; 円

26.1.3; 一つの円又は楕円

26.1.13; 天体又は自然現象の表現を内包する円あるいは楕円

26.1.15; 動物・動物の身体の一部又は植物の表現を内包する円あるいは楕円

26.1.16; その他の図形要素を内包する円又は楕円

26.2.3.91; 円又は楕円の一部を三・四・五・・・・角形で切り取った図形

29.1.2.2; 黄(図形)

29.1.4.2; 青(図形)

29.1.11; 一つの色が顕著なもの

 

これだけの要素が含まれていることになります。

上位概念でざっくりと広く分類しているところもあれば、かなり細かいところまで厳密に拾って分類をしているところもありますね。

 

例えば、「星」とざっくり拾いつつも、「四つ以上の星」とか「六つ以上の先端を有する星」とか、細かいところも拾ってます。

これは、おそらく検索するときに、可能性のありそうな条件を広めに指定しても、検索対象の図形の条件を細かい要素まで含ませることで、検索から漏れにくくするようにするためかと思います。

 

 

 

 

 

以上で今回の解説を終わりたいと思います。

皆様の商標検索の一助になれば幸いです。