特許申請ノウハウ

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映画『鬼滅の刃』と、集英社の商標申請

先日、映画『鬼滅の刃』が、ついに映画興行収入歴代1位となったことがニュースとなりました。

それまでの漫画、TVアニメでも多くのファンを集めていましたが、感動した方も多かったのではないかと思います。

その映画『鬼滅の刃』が公開されたのが昨年の10月。

その前に、漫画『鬼滅の刃』が連載されていた、週刊少年ジャンプを発行している集英社が、6月に『鬼滅の刃』関連の商標申請をしていたこともニュースになりました。

どのような商標が申請されていたのか、当時のニュース等でも報道されていましたが、改めてご紹介いたします。

1.映画化に合わせて集英社が申請した商標

6月22日に集英社が商標申請した商標は、主人公の名前である「炭治郎」(商願2020-076847)、炭治郎の妹である「禰豆子」(商願2020-076848)等の登場人物、炭治郎が所属する「鬼殺隊」(商願2020-076842)などがあります。

そして、これらの商標申請が今回の映画公開とリンクしていると考えられる、「無限列車」(商願2020-076844)も商標申請されています。

映画の正式なタイトルは『鬼滅の刃 無限列車編』です。

その後、炭治郎たちの羽織や着物の柄(商願2020-078058等)、英語版である「DEMON SLAYER」(商願2020-078471)、略称である「鬼滅」(商願2020-091331)も申請されています。

2.商標申請によって得ようとしている権利範囲

商標申請の際、「指定商品・指定役務」を、商標権の権利範囲として記載します。

商標をどのような業務の際に使用する権利を独占できるのか、という範囲を示し、権利範囲が広ければ広いほど、広範囲の業務における商標の使用を独占できます。

先程上げた数々の『鬼滅の刃』商標申請ですが、かなり広範囲の商品を指定しています。

漫画本、書籍は言うに及ばず、スマートフォンやそのカバー、キーホルダー、筆記用具、傘、被服、テレビゲーム機…出版社が使用するとはにわかに考えにくいものばかりです。

しかし、商標申請した商標を使って、集英社が直接上記のような商品を販売していなくとも、事前にライセンス契約などを締結したメーカー等が商標を使って販売する分には問題ありません。

そして、商標申請後その事実を公表することで、無断で『鬼滅の刃』にまつわる用語や模様を使って業務上の利益を得ようとする行為を抑止する効果もあります。

3.映画『鬼滅の刃』大ヒット!集英社が手に入れられる利益は?

今後、これらの商標申請が登録され、権利化された場合、集英社は商標権に基づき、許諾していない第三者の商標の使用を差し止めることができます。

しかし現時点で登録はされておらず、「鬼滅の刃」は空前の大ヒット。コラボグッズも街中にたくさんあります。現時点で集英社とライセンス契約してい第三者に対し、警告することにより、その警告後の商標の使用に対して金銭を請求することができます(請求が認められるのは、商標申請が登録されてからになります)。

集英社は『鬼滅の刃』関連の用語・模様で、自らの業務と直接関係しない権利範囲も商標申請しておりました。これは、単に自らの利益を保護するのみならず、ライセンス契約先のライセンシーの利益を保護するためにも必要なことといえます。

4.まとめ

商標申請する際、自らがその商標を使用するのみならず、コラボレーション等で他社にライセンス契約される場合はございますでしょうか。商標申請時に、ライセンス契約も含めて使用する業務を想定していくことが必要になります。商標をどのように使用するのか(ご自身が使用するのか、ライセンス契約を締結した上でご自身以外の方が使用するのか)商標申請前にぜひご相談ください。