裁定とは?
公共の利益のための通常実施権の設定の裁定というのをご存じでしょうか?
先日、「バイオベンチャーがiPS細胞を利用した目の細胞の製造方法の特許をもつ理化学研究所に対し、その特許の技術を使わせるよう経済産業大臣に裁定を求めた。」という報道がありました。
特許権は、独占排他権であるため、特許権者以外の第三者は、その特許発明を実施することができません。
しかし、第三者が特許発明を実施、または利用すれば、公共の利益になるものである場合には、その第三者に通常実施権の設定をするということを裁定といいます。
具体例
具体的には、
「発電に関する発明であってその発明を実施すれば、発電原価が著しく減少し需要者の負担が半減するような場合である」
「ガス事業に関する発明であってその発明を実施すれば、ガス漏れがなくなりガス中毒者が著しく少なくなるような場合」
初の裁定となるか?
などが工業所有権法逐条解説(いわゆる青本)に記載されています(青本特94条)。
つまり、公益の利益のためになる発明は、一定の対価を交換条件として、特許権者の意思にかかわらず、第三者に通常実施権の設定を裁定し、その発明を実施させることができるというものです。
ただし、これまで裁定請求が一度も認められたことはありません。
今回の場合、網膜の細胞を目の難病の患者に移植する治療の展開を目指していることが公共の利益に該当する否かが問題となってくると考えられます。