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【海外での商標登録】訴訟例1:クレヨンしんちゃん

「クレヨンしんちゃん」と言えば、
誰もが知っている有名キャラクターの1つですよね。

弊所が位置する埼玉県が舞台となっており、
ストーリーの面白さだけでなく、
そのキャラクターのかわいらしさから、
幅広い世代から人気を集めています。
(かくいう私もファンの一人です。)

連載開始から30年以上がたった今でも数多くのグッズが作られ、
あちこちで目にします。

そんな「クレヨンしんちゃん」ですが、
中国のデパートでグッズを発売した際、
日本での商標権者である双葉社の公式商品であるにも関わらず、
コピー商品であるとして店頭から撤去されたことをご存じでしょうか?

1997年、「クレヨンしんちゃん」の人気に目を付けた
中国企業数社が「クレヨンしんちゃん」の絵柄や
中国語名「蜡笔小新」を無断で商標登録し、
子供用の靴などを販売しました。
その後、2004年に双葉社が上海の企業とライセンス契約を結んで
グッズを販売したところ、
上記の商標権を侵害しているコピー商品であるとして、
売り場が閉鎖されてしまったのです。

双葉社はこのとき、
日本と台湾で商標権を取得していましたが、
中国では取得していませんでした。

中国の商標権は日本と同じく先願主義であるため、
先に出願した企業に商標権が認められてしまいます。
双葉社は翌2005年に中国企業の商標登録は無効であるとして
無効審判を請求しましたが、
登録から5年を経過した商標権は排斥期間を過ぎているとして却下処分を受け、
2008年に敗訴しました。

また、「蜡笔小新」の商標権者であった中国企業1社は
双葉社への商標権の譲渡を申し出ましたが、
あまりの高額だったため、双葉社は拒絶しました。

この問題の争点は商標権にとどまりません。
中国企業はキャラクターの図柄や
デザイン化された「蜡笔小新」のロゴを商標登録していました。
これは、原作者の著作権を侵害しています。
著作権は商標権と異なり、申請しなくても守られる権利です。

双葉社は2007年に無効審判を再度請求し、
事の発端から8年後の2012年に勝訴しました。
判決では中国企業の著作権侵害が認められ、
全ての商標権が失効、賠償金の支払いが命じられました。

「クレヨンしんちゃん」ほどの有名キャラクターでも、
他社に一度商標権を取られてしまうと、
権利を取り返すためには8年もの年月と多額の費用、労力がかかりました。

中国ではこれまでも、
日本の著名な商標が先に商標登録されてしまうことが
数多く起こっています。
「クレヨンしんちゃん」の事件は、
海外進出が確定していなくても、
今後少しでも可能性があるのならば、
早めに海外でも商標権を取得しておくべき
という、
大きな教訓になったのではないでしょうか。

弊所では海外への商標出願も承っております。
海外での権利侵害に不安のある方、
今後海外展開を考えている方など、
些細なことでもお気軽にご相談ください。

参考:双葉社プレスリリース
https://www.futabasha.co.jp/news/36