商標登録をする上で、権利範囲(指定商品・役務)を適切に選ぶことは、極めて重要です。
こちらに誤りがあると、後々、競合に、権利の隙間部分について商標権を取得され、思わぬカウンターを貰ってしまうリスクが発生してしまいます。
以前、本来であれば、医薬用の治療薬(第5類)で権利化しなければならないにも関わらず、誤って化粧品(第3類)を指定して商標登録されているという例を見たことがあります。
このようなことになってしまうと他社に権利を使うことができないなどの致命的な事態になりかねません。
このように、指定商品・役務は、事業の将来性までを考慮した上で、正確かつ、権利範囲に漏れをなくして選んで商標登録しなければなりません。この作業が最も難しく、専門家でなければ完璧に近い形で選ぶことは困難であるとも言えます。
本日は、適切に商標登録するために、専門家ではない方でもできる指定商品・役務の選び方について解説します。
まず初めに行うことは、競合他社の社名・サービス名・商品の洗い出しです。とにかく、今回申請しようとしている商品・サービスと競合する、他社の商品名・サービス名を明確にします。「競合の商品名・サービス名など分からない」という方もいらっしゃると思います。
そのような場合には、インターネットの検索エンジンを使って、競合の商品名・サービス名を調査します。
仮に、これから多店舗化する餃子屋の店舗名で商標権を取りたい方がいるとします。その場合には、検索エンジンを使って、他に多店舗化している餃子屋を調べます。検索キーワードとしては、「餃子 チェーン」などを適宜入力します。
上記のような商標登録例が、検索結果としてヒットしました。「バーミヤン」「餃子の満州」「餃子の王将」「ホワイト餃子グループ」などが商標登録されています。
次に、検索した結果として、ヒットした「バーミヤン」「餃子の満州」「餃子の王将」「ホワイト餃子グループ」がどのような商標が登録されているかをJ-Platpatを使って調べます。これぐらいの規模の企業になると、ほぼ確実に商標登録しているので、店名で検索をするとヒットします。
今回は、「ホワイト餃子」にて、まず初めに検索をしました。すると、第42類(現在は43類)の「ぎょうざの提供」を指定して商標登録していることが分かります。
ここで、大切なのは、1社のみではなく、複数社(できれば5社)ほど、何を指定して商標権登録しているかを調べることです。複数社が指定しているものを網羅すれば漏れを格段に減らすことができるようになります。
そこで、次の候補として、「バーミヤン」で検索します。73件というとんでもない数がヒットしますが、全てに目を通すことが重要です。これによって、指定漏れを減らすことが可能になります。一旦、商品・役務を指定漏れした状態で商標登録をしてしまうと、後で追加はできないので、取り返しのつかないことになります。ですので、面倒でもこの手間を惜しんではいけません。
「バーミヤン」の例では、中華料理を主とする飲食物の提供,定食の提供,アルコ―ル飲料の提供,茶・コ―ヒ―・清涼飲料又は果実飲料等の飲食物の提供,甘味食物の提供を指定して商標登録をしていることが分かります。
先ほどの例では、「ぎょうざの提供」のみでしたが、アルコール飲料の提供なども指定した方が良いということが分かります。競合他社をさらに調べると、「ケータリングの提供」なども含めることでさらに漏れを減らすことができるということが分かります。
「バーミヤン」での検索結果ですが、一覧で表示するとこのような形になります。ここで、注目をしなければならないのは、第42類(現在は43類)以外にも、第30類や、第35類を指定して商標登録をしているという点です。因みに、第30類は、弁当、調味料、菓子などの分野になります。こちらは、料理のテイクアウトを指定していることから、指定しているものとなります。
飲食店の分野では、第30類(食品類)と、第42類(店舗内での飲食物の提供)をセットで商標登録している例が非常に多いです。
そのため、弁当を販売したり、店内で作ったものをお客様にテイクアウトさせている際には、第30類についても指定して商標登録をすることが重要であることも分かります。
第35類についてはどうでしょうか。第35類は、小売業や、クーポン券の発行、トレーディングスタンプの発行、FC化(フランチャイズ展開)する際の店舗への販売促進のための情報提供などの分野になります。
すなわち、FC化(フランチャイズ展開)する上では、第35類を指定して商標登録することが非常に重要になることがわかります。
これによって、区分としては、第30類、第35類、第42類(現在は43類)を指定して商標登録すれば漏れが少なくなることが分かります。
商標申請をするに際して、商品・役務の漏れを減らすことがとにかく重要になります。後で、後悔しないためにも、競合が何を指定しているかについては、把握しておくことが肝要になります。